ヒートマップとは?定量データだけでは見えない「なぜ」を明らかにする方法

By Yoshinari Kawachi
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目次

SaaSプロダクトやWebサービスを運営していると、Googleアナリティクス4(GA4)やBIツールを通じて定量データを見る機会は多いのではないでしょうか。
たとえば、UU数、機能利用率、アクティベーション率、CVR(コンバージョン率)、PV(ページビュー)、離脱率、平均セッション時間などです。

しかし、プロダクト改善において本当に知りたいのは、「なぜその数値になったのか?」という“背景”ではないでしょうか。
あるランディングページのCVRが低かったとします。その原因が「CTAボタンの位置が悪い」のか、「ユーザーが途中で情報に飽きて離脱している」のか、「フォームが使いづらい」のかは、定量データだけでは判断できません。
つまり、定量データでは“現象”は把握できても、“理由”までは見えてこないのです。

こうしたギャップを埋める手段のひとつが「ヒートマップ」です。

ヒートマップを使えば、ユーザーの行動を視覚的に捉え、注目されたエリアや離脱ポイントがひと目で把握できます。

さらに、セッションリプレイを併用することで、ユーザーが実際にどのようにページを閲覧・操作していたのかまで、リアルに再現することが可能です。

本記事では、ヒートマップの基本から、活用のコツ、セッションリプレイとの併用による価値まで、プロダクト改善やWebサイト改善に活かせる実践的な情報をわかりやすく解説します。

ヒートマップとは?

ヒートマップとは、ユーザーがWebページやプロダクト上でどのような行動を取ったかを、色の濃淡や割合で視覚的に表現する分析ツールです。
熟読されている箇所は赤く、注目されていない箇所は青く表示されるなど、一目で「どこが読まれ、どこが見られていないか」を可視化できます。

ヒートマップでは、ページ全体の中で以下のような行動を可視化できます:

  • ユーザーがどこまでスクロールしたか

  • どこをクリックしたか

  • どこにマウスカーソルを合わせていたか

これらの行動データをもとに、ユーザーの視線や興味”を可視化します。

定量ツールとの違い

GA4などのアクセス解析ツールでは、「ボタンのクリック数」や「エンゲージメント率」などの定量データは取得できますが、数値であるがゆえに直感的な理解が難しい場面もあります。

一方、ヒートマップは、定量的なデータを視覚的にわかりやすく、直感的に把握できるツールです。

プロダクトマネージャーやマーケターが開発チームやデザイナーと改善議論を進める際にも、ヒートマップの画像を共有することで、「どこでユーザーが止まっているのか」「利用を促したい機能がそもそも見られていない」といった会話が、ファクトに基づいて進められるようになります。

ヒートマップの種類とそれぞれの分析ポイント

ヒートマップは異なる視点でユーザーの行動を可視化する複数の機能群で構成されていることが多いです。
ここでは代表的な3種類のヒートマップについて、それぞれの特徴と分析ポイントを解説します。

スクロールヒートマップ:ページ到達度を可視化

スクロールヒートマップは、ユーザーがページをどこまでスクロールして読んだかを視覚的に示すものです。
閲覧されている部分は色が濃く、閲覧数が少なくなるにつれて色が薄くなっていくのが一般的です。

scroll

■ ユースケース

  • ブログ記事や機能ページの読了率を確認したい

  • ファーストビューのデザインが適切か確かめたい

  • CTAボタンの設置位置が適切か検証したい

■ 分析のポイント

  • ユーザーがどこで読むのをやめているか(離脱ポイント)

  • 最も読まれているエリア(注目ゾーン)

  • CTAや重要な情報が適切な位置にあるかどうか

■改善アクション例

  • 読まれていないエリアの情報を上部に移動する

  • 離脱箇所の直前に文章の“つなぎ”を追加する

  • CTAの位置を、より多くのユーザーが目にする場所に変更する

スクロールヒートマップは、「ページ構成を改善する」ための第一歩として有効です。
ユーザーの読了傾向を把握することで、ページ設計の意図を視覚的に検証できます。

クリックヒートマップ:ユーザーの意図を意図と割合で見る

クリックヒートマップは、ページ上のどこがどれだけクリックされたかを、色や割合で示すヒートマップです。

Click


■  ユースケース

  • ナビゲーションやリンクの使われ方を確認したい

  • CTAが適切にクリックされているかを確認したい

  • ユーザーがどこに期待してクリックしているかを把握したい

■ 分析のポイント

  • 本来リンクでない要素へのクリック(誤クリック)の有無

  • CTAやバナーのクリック率の偏り

  • リンクの配置や順番の妥当性

■ 改善アクション例

  • 誤クリックが発生している箇所のデザインを修正する

  • クリック率の高い要素を強調表示し、周囲も最適化する

  • 意図とずれたクリックが多い箇所には説明文を追加する

クリックヒートマップは、 数値だけではわからない“意図のズレ”や“期待値とのギャップ”を、直感的に理解できる点が大きな魅力です。

熟読エリアヒートマップ:どこに視線が集まっているか

このタイプのヒートマップは、ページ内でユーザーが最も注視しているエリアを示します。マウスの動きや滞在時間をもとに、「読み込まれている/視線が止まっている」箇所を可視化します。

area

■  ユースケース

  • 重要な説明文やキャッチコピーが読まれているかを確認したい

  • 商品画像や価格表示に視線が集まっているかを知りたい

  • ユーザーが迷っている(滞留している)箇所を把握したい

■ 分析のポイント

  • 熟読されているがCVに繋がっていない箇所:混乱要因の可能性

  • ほとんど読まれていない場所:不要情報または配置ミスの可能性

  • 滞在時間が長い場所:興味関心 or 戸惑いの兆候

■ 改善アクション例

  • 熟読されているがCVに繋がっていない箇所の表現を見直す

  • 滞在時間が長い箇所にはナビゲーションや補足情報を追加する

  • 目立たせたい箇所に視線が集まっていない場合はデザインを改善する

このヒートマップは、ユーザーの「思考や感情」が色として表現されるため、UI/UXの仮説検証に最適です。

セッションリプレイとは?「なぜ」の手がかりを深掘りするツール

ヒートマップは、「どこが注目されたか」「どこがクリックされたか」といった“集約された視点”からユーザー行動を可視化するツールです。
しかし、その裏にある「一人ひとりの具体的な動き」や「操作の流れ」までを把握する点は苦手領域です。

そこで力を発揮するのが、「セッションリプレイ」です。

セッションリプレイとは何か?

セッションリプレイとは、ユーザーがWebページやプロダクト上で実際に取った操作を、動画のように再現して確認できる機能です。

replay

具体的には、以下のような操作情報が記録・再生されます:

  • マウスの動き

  • スクロール操作

  • クリック/タップした箇所

  • 入力フォームでの操作

  • ページ遷移

つまり、「ユーザーがどこを見て、何に戸惑い、どう操作していたか」を、まるで観察しているかのように理解できます。

関連コンテンツ: セッションリプレイとは?ユーザー行動を動画で再現し、課題を紐解く

 ヒートマップとセッションリプレイの違いと補完関係

ヒートマップとセッションリプレイは、分析の視点において役割が異なります。

観点

ヒートマップ

セッションリプレイ

見える情報

多数のユーザーの集計行動

一人ひとりの個別行動

表現形式

色や割合で示す静的な視覚データ

動画のような操作再現

強み

全体傾向を直感的に把握

個別のUXを深く理解

弱み

個別の“違和感”には気づきにくい

大量ユーザー分析には不向き

適した用途

ページ構成やCTA配置の改善

エラー検証やオンボーディング改善

たとえば、ヒートマップで「フォームでの離脱が多い」ことがわかったとしても、「なぜ入力をやめたのか」まではわかりません。

セッションリプレイであれば、実際にユーザーが何を入力しようとし、どこで止まり、どこで離脱したのかまでを確認できます。

セッションリプレイがSaaSのオンボーディングに効く理由

プロダクトマネージャーにとって特に注目すべきは、セッションリプレイが「オンボーディング状況」を可視化できる点です。

SaaSの無料トライアルや初回ログイン後の導線において、ユーザーが次に何をすればよいか迷っていたり、チュートリアルをスキップしてしまっていたりするケースは少なくありません。
こうした「体験のズレ」や「理解の齟齬」は、数値には表れない離脱要因となる可能性があります。

セッションリプレイを活用することで、以下のような情報を具体的に確認し、オンボーディングフローを最適化できます:

  • 初回ログイン直後にユーザーが取った行動パターン

  • 操作の詰まりや、無操作時間の長さ

  • 特定機能の未使用傾向

 Wicleにおけるセッションリプレイの特長

Wicleでは、ヒートマップとセッションリプレイの両方をワンツールで提供しています。
ヒートマップによってユーザー行動の全体像を捉え、セッションリプレイでその“背後”にあるユーザーの思考や戸惑いを深掘りすることで、定量と定性からユーザー行動を正確に捉えたプロダクト改善サイクルを構築できます。

これにより、「ただ見るだけ」で終わらず、「見るべきセッション」から改善ポイントを発見するための機能が整っています。

ヒートマップとセッションリプレイの活用シーンと改善事例

ヒートマップとセッションリプレイは、それぞれ単独でも強力な分析ツールですが、両者を組み合わせることで「なぜユーザーが離脱したのか」「どこで迷ったのか」といった因果関係を明らかにすることができます。

ここでは、SaaSプロダクトやWebサービスにおいて実際に役立つ、3つの具体的なシーンと改善アプローチをご紹介します。

離脱率が高いページの改善:原因の特定と優先順位付け

課題例:
サービス紹介ページの離脱率が高く、CVRも低い。数値は出ているが、原因が見えない。

■ ヒートマップでわかること

  • スクロールヒートマップでは、ページ中盤以降の到達率が急激に低下している

  • CTAボタンが読了後に配置されており、ほとんどのユーザーが目にしていない

  • クリックヒートマップでは、重要ではないリンクが多数クリックされている(ユーザーの誤解を招いている可能性)

■ セッションリプレイで見えること

  • 多くのユーザーがファーストビューで1〜2秒静止し、そのまま離脱している

  • 重要な訴求がファーストビューで伝わっていない様子が見受けられる

  • 一部のユーザーはスクロール後、一度見たコンテンツに戻ってから離脱しており、内容の分かりづらさがうかがえる

■ 改善アプローチ

  • CTAボタンをページ内の複数箇所に配置し、視認性を高める

  • ファーストビューに要点を集約し、キャッチコピーを改善する

  • ユーザーがよくクリックしていた、重要ではないリンクを削除する

  • ユーザーが迷っていた箇所のコンテンツを再構成・修正する

このように、「数値で見えた課題(離脱率)」に対して、「なぜ離脱したのか」の根拠を多角的に取得できるため、“勘”ではなく“観察”に基づいた改善施策の立案が可能になります。

CTAのクリック率向上:デザインと配置の最適化

課題例:
CSVデータダウンロードボタンのCTR(クリック率)が極端に低い。

■ ヒートマップでわかること

  • ページ中盤に配置されたCTAボタンは、ほとんどクリックされていない

  • CTAの文言と他の要素との視認性が低く、色のコントラストも弱い

  • 一部の非リンク要素(図や画像)が誤ってクリックされている

■ セッションリプレイで見えること

  • ユーザーがCTA手前で一瞬静止し、スクロールを戻して離脱している

  • CTAにカーソルを合わせたあと、他のリンクへ移動するケースが多い

  • ボタンにマウスを合わせたものの、クリックせず離れる動作が複数回観測されている(不安・迷いの兆候)

■ 改善アプローチ

  • CTAの色やサイズを目立たせて、視認性を向上

  • CTA直前のテキストやレイアウトを整理し、ダウンロードの動機づけを明確にする

  • ボタンの文言を具体的かつ明瞭にする

このように、CTAの直前行動を観察することで、単なるクリック率の変化では見えない「クリックされない理由」を把握できるようになります。

スマホユーザーのUX改善:モバイル特有の課題を解消

課題例:
スマートフォン経由の訪問者の直帰率が高い。PCでは問題がないページが、モバイルではうまく機能していない。

■ ヒートマップでわかること

  • メニューのボタンが他の要素に隠れており、タップされていない

  • CTAが画面最下部にあり、ほとんどスクロールされていない

■ セッションリプレイで見えること

  • スクロール中に誤タップが多発し、すぐに離脱している

  • ハンバーガーメニューが反応せず、操作に戸惑うユーザーが多い

  • ユーザーが拡大・縮小を繰り返しながら情報を読み取ろうとしている(文字サイズやUIの不備)

■ 改善アプローチ

  • ファーストビューに重要情報を集約し、文字サイズも適切に調整

  • メニューやCTAのタップ可能領域を拡大し、UIをモバイル向けに最適化

  • スマートフォン専用の導線設計を実装し、表示の自動切り替えを強化

モバイルUIはデバイスごとの特性に大きく依存するため、実際の操作映像からUXを確認できるセッションリプレイが非常に有効です。
数値では読み解けない“指先の動き”を把握することで、直帰率の低減やUIエラーの解消につなげることができます。

ヒートマップ導入の手順とツール選びのポイント

ヒートマップやセッションリプレイの重要性は理解していても、実際に導入するとなると
「技術的に難しそう」「分析に時間がかかりそう」「使いこなせるか不安」といった声が挙がることもあります。

しかし現在では、多くのツールがノーコードで簡単に導入でき、直感的な操作で分析可能です。
特に中小企業のSaaSプロダクトやWebサービスにとっては、最小の投資で最大の改善インサイトを得られるツールとして、早期導入が強く推奨されます。

ここでは、導入までの一般的な流れついて紹介します。

■ 導入ステップ①:対象ページの選定

まずは、ヒートマップやセッションリプレイでどのページを分析するか適用するかを決定します。

推奨される対象ページ:

  • ランディングページ(CVに直結する)

  • サインアップページや無料登録ページ

  • プロダクトオンボーディング導線(チュートリアル/初回体験画面)

■ 導入ステップ②:タグの設置

ヒートマップツールの多くは、対象のWebページにタグを設置するだけで動作を開始します。
CMSを使用している場合は、ヘッダーやフッターへの一括設置も可能です。

タグ設置のポイント:

  • Google Tag Managerなどを活用すると、柔軟なタグ管理が可能

  • セキュリティ上の懸念がある場合は、送信データの仕様を事前に確認する

■ 導入ステップ③:データ蓄積と分析の開始

タグを設置すると、ユーザーの行動が自動的に蓄積され、一定期間後からヒートマップやセッションリプレイが閲覧可能になります。
データの蓄積には、数時間〜数日程度かかるケースが一般的です。

この段階で行うべきこと:

  • 仮説を立てて、ヒートマップを確認する

  • 異常値や特徴的なユーザー行動を洗い出す

  • セッションリプレイは「見るべきユーザー」に絞って確認する

Wicleについて

Wicleは、ユーザー行動を定量・定性の両面から把握できるプロダクト分析ツールです。従来のアクセス解析やBIツールでは拾いきれなかった「ユーザー目線の体験」を可視化できる点が、特長です。

主な機能(一部)

  • ヒートマップ: クリック、スクロール、注目エリアの可視化

  • セッションリプレイ: 個々のユーザーのリアルな行動を録画・再現

  • AI要約機能: ユーザー行動をAIが自動要約し、クイックに傾向を捉える

  • ライフサイクル:ユーザーの新規/定着/ファン/休眠など、全体像を自動で可視化

これらを一つのインターフェース上でクエリいらいずで扱えるため、ユーザー行動の仮説立案から改善提案までを、スピーディかつ正確に実行できます。

GA4やLookerなどのBIツールでは、「どのページで離脱が多いか」「どの導線のCVRが低いか」といった定量的な結果”は把握できます。 しかし、Wicleを使えばその背景や理由まで、以下のようなプロセスで具体的に読み解くことができます。

【活用ステップ例】

  1. Lookerで利用頻度が低い重要機能を特定

  2. 該当ページに到達する前のページのヒートマップを確認
     - CTAの視認性は十分か?
     - 誤クリックが発生していないか?

  3. AI要約機能で、該当機能のユーザーの行動傾向を把握

  4. セッションリプレイで深掘り
     - “迷い”や“詰まり”の兆候を確認
     - 無操作状態や“戻る動作”など、数値で見えない行動を発見

  5. チームで改善案を共有し、ABテストなどの施策へ展開

このように、Wicleは数値の“なぜ”を言語化するツールとして活用でき、プロダクトマネージャーの意思決定の質を高めることが可能です。

Wicleは無料でセッションリプレイとヒートマップを利用できます

wicleheatmap

セッションリプレイとヒートマップを組み合わせることで、ユーザーの行動を可視化できます。どのようにデータが可視化されるのかをご確認いただけるデモプロジェクトも公開中です。


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