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「ユーザーの行動は把握しているはずなのに、改善が的を射ない」。 そんな課題を感じたことはありませんか。
アクセス数やコンバージョン率などの数字は見ていても、ユーザーが何を考え、どこでつまずいているかまでは見えにくいものです。 ユーザージャーニーの可視化は、こうした「見えない体験」を一枚の地図として描き出す手法です。
プロダクトマネージャーやマーケターがチームで共通理解を持ち、改善の優先度を判断するための土台になります。 本記事では、ユーザージャーニーの基本概念から、可視化の具体的な手順、行動分析ツールを活用して精度を高める方法までを丁寧に解説します。
ユーザージャーニーの可視化とは?基本概念を理解する
ユーザージャーニーの可視化とは、ユーザーの体験を「地図」として描き出す手法です。 プロダクトやサービスとの関わりを時系列で整理し、改善の手がかりを見つけることが目的です。
基本概念を押さえ、似た概念であるカスタマージャーニーとの違いを理解しましょう。
ユーザージャーニーとは何か
ユーザージャーニーとは、ユーザーがプロダクトやサービスを利用する際の一連の体験を、時系列に沿って表したものです。
たとえば、Webサービスに初めてアクセスしてから、会員登録し、機能を試し、目的を達成するまでの流れが該当します。 この流れを可視化したものを「ユーザージャーニーマップ」と呼びます。
マップでは、ユーザーの行動だけでなく、各段階での思考や感情の変化も合わせて記録します。 単なる操作手順のフロー図とは異なり、「なぜその行動をしたのか」「そのとき何を感じていたか」まで踏み込む点が特徴です。
この可視化によって、プロダクトの使いにくさやユーザーが離脱する原因が、具体的に浮かび上がります。
カスタマージャーニーとの違い
カスタマージャーニーとユーザージャーニーは、似た概念ですが対象範囲が異なります。
項目 | ユーザージャーニー | カスタマージャーニー |
対象範囲 | 特定のタスクや機能の利用体験 | 認知〜購入〜利用〜継続の全体像 |
視点 | プロダクト内のUX | ブランドとの関係性全体(CX) |
時間軸 | 比較的短い(数分〜数日) | 長期的(数週間〜数ヶ月以上) |
主な活用者 | PM・UXデザイナー・開発チーム | マーケター・経営層・CS部門 |
カスタマージャーニーは、顧客がサービスを「知る→検討する→買う→使い続ける」という広い流れを対象とします。 一方、ユーザージャーニーは、プロダクト内での具体的な体験にフォーカスします。
たとえば、「アプリ内でレポートを作成する」といった特定のタスクにおける体験の可視化が、ユーザージャーニーの守備範囲です。 プロダクト改善を目的とする場合は、ユーザージャーニーの活用が適しています。
ユーザージャーニーを可視化するメリットとは
ユーザージャーニーの可視化は、単に体験を「見える化」するだけではありません。 プロダクト改善の精度を上げ、チームの意思決定を強化する効果があります。
ここでは、可視化がもたらす代表的な3つのメリットを紹介します。
ユーザー体験の全体像を俯瞰できる
プロダクト改善の現場では、特定の画面やKPIに注意が偏りがちです。 ユーザージャーニーを可視化すると、断片的だったデータが一本のストーリーとしてつながります。
たとえば、SaaSプロダクトでトライアルからの有料転換率が低い場合。「料金ページのCTAが弱い」という一点に目を向けるだけでは、本質を見落としてしまいます。ジャーニー全体を俯瞰すれば、その前後の体験も含めて原因を探れます。
サインアップ後のオンボーディングで、主要機能の価値を十分に体験できているか
トライアル期間中に「これがないと困る」という習慣化が生まれているか
料金ページに至るまでの導線で、不安や疑問が解消されているか
こうした全体の流れを俯瞰することで、本質的な課題が見えてきます。
プロダクト改善の優先度が明確になる
可視化されたジャーニーマップは、改善の優先度を判断するための地図になります。
ユーザーの感情がネガティブに振れるポイントは「ペインポイント」と呼ばれ、改善によるインパクトが大きい領域です。 マップ上でこのペインポイントが明確になれば、チーム内で「どこから改善すべきか」の合意形成がしやすくなります。
限られたリソースのなかで成果を出すには、やみくもな施策ではなく、根拠に基づいた優先順位づけが欠かせません。 ジャーニーマップは、その判断材料を提供してくれます。
チーム間の共通認識が生まれる
プロダクト開発やマーケティングでは、PM・デザイナー・エンジニア・マーケターなど、異なる視点を持つメンバーが関わります。
それぞれが別々のデータや印象でユーザー像を語ると、施策の方向にブレが生じます。 ユーザージャーニーマップは、チーム全体が「ひとりのユーザーの体験」を軸に議論できる共通言語として機能します。
マップを囲んで議論することで、次のような効果が期待できます。
部署間の認識のズレが減る
施策の根拠が共有される
「誰のために、何を改善するのか」が明確になる
結果として、チーム全体でユーザー中心の意思決定ができるようになります。
ユーザージャーニーを可視化する4つのステップ
ジャーニーマップの作成は、難しい手法ではありません。 4つのステップに沿って進めれば、チームで実用的なマップを作れます。
ここでは、各ステップで具体的に何をすべきかを解説します。
Step1:ペルソナと目的を定める
最初に、マップの「主人公」と「ゴール」を決めます。
ペルソナとは、対象ユーザーの代表的な人物像です。 年齢や職種だけでなく、次のような情報を設定すると、ジャーニーの具体性が増します。
役割・業務内容:マーケティング担当、PM、CS担当など
ITリテラシー:初級〜上級
利用目的:何を達成するためにサービスを使うのか
抱えている課題:現状のペインポイント
同時に、マップ作成の目的も明確にしましょう。 「新規ユーザーのオンボーディング改善」「特定機能の利用率向上」など、具体的なゴールがあるほど、マップの焦点が定まります。
Step2:タッチポイントと行動を整理する
次に、ペルソナがサービスと接する「タッチポイント」を時系列で洗い出します。
タッチポイントとは、ユーザーがサービスと関わるすべての接点のことです。 以下のように、オンライン・オフラインを問わず幅広くリストアップします。
フェーズ | タッチポイントの例 |
認知 | Web広告、SNS、口コミ、検索結果 |
検討 | サービスサイト、料金ページ、事例記事 |
利用開始 | 会員登録フォーム、初回ログイン、チュートリアル |
活用 | ダッシュボード、レポート機能、設定画面 |
継続・拡大 | カスタマーサポート、アップデート通知、活用セミナー |
各タッチポイントにおいて、ペルソナが「具体的にどんな行動をするか」を書き出しましょう。 「料金ページでプランを比較する」「チュートリアルをスキップする」など、実際の行動レベルで記述するのがポイントです。
Step3:感情と課題をマッピングする
行動の整理ができたら、各タッチポイントでの「感情」と「課題」を加えます。
感情は、ポジティブ・ニュートラル・ネガティブの3段階で整理するとわかりやすいです。 感情曲線としてマップ上に描くことで、体験全体の浮き沈みが一目で把握できます。
たとえば、次のような記述が考えられます。
会員登録時:入力項目が多く、面倒に感じる(ネガティブ)
初回利用時:操作方法がわからず不安になる(ネガティブ)
レポート確認時:データが可視化されて嬉しい(ポジティブ)
感情がネガティブに振れている箇所が、改善すべき課題の候補です。 「なぜその感情が生じるのか」を深掘りすることで、表面的ではない本質的な課題にたどり着けます。
Step4:分析結果から改善アクションを立案する
マッピングが完了したら、課題を優先度で整理し、具体的な改善アクションに落とし込みます。
優先度を判断する際には、以下の2軸で評価すると整理しやすいです。
影響度:改善した場合のユーザー体験やKPIへのインパクトの大きさ
実行容易性:改善にかかるコストや工数の少なさ
影響度が高く、すぐに着手できる課題から取り組むのが基本です。
改善アクションの例を挙げます。
課題 | 改善アクション |
登録フォームの入力項目が多い | 必須項目を最小限に絞り、段階的に情報を取得する |
チュートリアルが長く離脱が多い | インタラクティブな短縮版に変更する |
目的の機能にたどり着けない | ナビゲーションの導線を見直す |
作成したアクションプランは、チーム内で共有し、定期的に進捗を確認しましょう。 ジャーニーマップは一度作って終わりではなく、改善と検証を繰り返して更新するものです。
ユーザージャーニー可視化の精度を高める方法
ジャーニーマップの精度は、どのようなデータに基づいて作成するかで大きく変わります。
多くの場合、ユーザーインタビューや観察といった定性データが出発点になりますが、それだけでは限界があります。 定量的なデータを組み合わせることで、ジャーニーマップの信頼性を高めることができます。
定性データだけでは見えない落とし穴
ユーザーヒアリングやアンケートは、体験の文脈や感情を理解するうえで非常に有用です。
しかし、定性データには以下のような限界があります。
主観バイアス:ユーザー自身の記憶や解釈に依存するため、実際の行動と異なる場合がある
サンプルの偏り:ヒアリング対象が限られるため、全体傾向を反映しきれない
再現性の課題:同じ調査を別の時期に行うと、異なる結果が出ることがある
「ユーザーはこう言っていた」という情報だけでマップを作ると、実態とズレたジャーニーになるリスクがあります。 定性データの価値を活かしつつ、客観的なデータで裏付けを取ることが重要です。
行動分析ツールで定量的な裏付けを加える
定性データの限界を補うのが、行動分析ツールによる定量的なアプローチです。
行動分析ツールを使うと、ユーザーが実際にプロダクト上でどのように動いたかを、データとして正確に把握できます。 具体的には、以下のような分析が可能です。
ページ遷移やクリックの流れ:ユーザーがどの経路を通り、どこで離脱したかを把握
ヒートマップ:ページ内のどの要素に注目が集まっているかを可視化
セッションリプレイ:個々のユーザーの実際の操作を動画で再現し、つまずきポイントを特定
たとえば、ヒアリングでは「登録は簡単だった」という回答だったのに、実際のデータではフォームでの離脱率が高いといったギャップが発見されることがあります。
こうした「言葉と行動のズレ」を見つけることで、ジャーニーマップの精度は格段に向上します。 定性と定量、両方の視点を持つことが、実態に即したユーザージャーニーの可視化につながります。
まとめ:可視化から始めるユーザー中心のプロダクト改善
ユーザージャーニーの可視化は、プロダクト改善やマーケティング施策の質を底上げする実践的な手法です。
本記事のポイントを振り返りましょう。
ユーザージャーニーは、ユーザーの体験を時系列で可視化したもの
カスタマージャーニーとは対象範囲が異なり、プロダクト改善にはユーザージャーニーが適している
可視化により「体験の俯瞰」「改善の優先度判断」「チームの共通認識」が得られる
4つのステップで、チームでも実践的なマップを作成できる
定性データと定量データを組み合わせることで、マップの精度が高まる
チームで取り組む第一歩としての可視化
ユーザージャーニーの可視化は、大がかりなプロジェクトとして構える必要はありません。
まずは対象を絞り、小さなスコープから始めてみることが大切です。 チームで一枚のマップを作る過程そのものが、ユーザー視点の共有や課題意識の統一につながります。
完璧なマップを目指すよりも、仮説ベースでまず作り、実データで検証しながら磨いていく進め方が現実的です。
行動データを活かしてジャーニーの精度を上げるには
ジャーニーマップの精度を高めるには、ユーザーの実際の行動データが欠かせません。
Wicleは、ユーザーの行動パターンを自動で分析し、可視化するAIアナリティクスツールです。 ヒートマップやセッションリプレイなどの機能を活用すれば、定性的なジャーニーマップに定量的な裏付けを加えられます。
「ユーザーが実際にどう動いているのか」をデータで確認することで、仮説だけに頼らない、精度の高いジャーニー改善が可能になります。
ユーザー中心のプロダクト改善を目指す方は、行動分析の視点をジャーニーマップに取り入れてみてはいかがでしょうか。

