
「ペルソナを作ったほうがいい」と聞いたことはあるけれど、実際に手を動かそうとすると止まってしまう。何を書けばいいのか、どこまで詳しく設定するべきか、わからないまま後回しにしている方は少なくありません。
ペルソナとは、自社の商品やサービスの典型的な顧客像を具体的に描いたものです。正しく設計できれば、コンテンツの方向性やWebサイトの改善方針が明確になり、チーム内の認識もそろいます。作り方を誤ると「作っただけで使われない資料」で終わるリスクもあるため、手順を押さえて取り組むことが大切です。
この記事では、ペルソナの基本的な考え方から、手を動かして作るための具体的な手順、実務で活用するコツまでを解説します。初めてペルソナを作る方でも迷わず進められるよう、必要な項目やつまずきやすいポイントも紹介しています。
ペルソナとは?ターゲットとの違いと作る目的
マーケティング施策を考えるとき、「誰に届けるか」が曖昧なまま進んでしまうケースがあります。ターゲットを定めていても、チームメンバーが思い浮かべる顧客像にずれがあれば、コンテンツの方向性は一貫しません。ペルソナは、こうしたずれを防ぐために設計する「具体的な一人の顧客像」です。
ペルソナとターゲットの違い
ターゲットは属性でくくったグループ、ペルソナは一人の人物として描いた顧客像です。両者の違いを表で整理します。
項目 | ターゲット | ペルソナ |
粒度 | 属性でくくったグループ | 一人の具体的な人物像 |
例 | 30代、中小企業のマーケティング担当者 | 田中さん(35歳)、IT企業でWeb集客を一人で担当。上司への成果報告にプレッシャーを感じている |
わかること | どの層に届けるか | その人の悩みや行動パターン |
ペルソナの解像度まで落とし込むと、この人が何に困り、どんな情報を求めているかが見えてきます。
ペルソナを作ることで得られる3つの効果
ペルソナを設計すると、主に3つの変化が期待できます。
1つ目はコンテンツの方向性が定まる点。「この人が読んで役に立つか」を基準に判断できるため、企画段階の迷いが少なくなります。
2つ目はチーム内の認識がそろうこと。立場の異なるメンバーが同じ顧客像を共有できると、施策のトーンや訴求がぶれにくくなるからです。
3つ目は顧客理解の深まり。作成の過程で既存顧客のデータやインタビュー結果を整理するため、思い込みに頼らない判断が可能になります。
ペルソナの意義を踏まえて、具体的な作り方に進みます。
ペルソナの作り方
ペルソナは「こんな人だろう」と想像だけで書いてもうまく仕上がりません。事実に基づいた情報を集め、整理し、一人の人物像に落とし込む工程が求められます。全体の流れを表にまとめました。
ステップ | やること | ポイント |
1. 情報収集 | 顧客データやインタビューから素材を集める | BtoBは組織の意思決定プロセスにも注目 |
2. 分類 | 課題や行動の共通点でグループ分け | 好意的な声だけに偏らない |
3. 落とし込み | 一人の人物像としてシートにまとめる | 行動が想像できる記述を加える |
各ステップを順に見ていきます。
既存データやインタビューから情報を集める
最初に取り組むのは情報収集です。自社の顧客データ、営業が受けている相談内容、過去のアンケート結果など、手元にある素材から着手しましょう。余裕があれば既存顧客へのインタビューも有効で、数値だけでは見えないリアルな声が手に入ります。BtoBの場合は、担当者個人の悩みだけでなく組織の意思決定プロセスにも目を向けておくと精度が上がるでしょう。
集めた情報を分類して共通パターンを見つける
情報が集まったら、顧客の課題や行動の共通点を探ってグループ分けします。「施策の成果報告が大変」「コンテンツのネタ出しに時間がかかる」といった声が複数見つかれば、それが一つのパターンです。自社に好意的な声だけを拾うと実態とかけ離れるため、偏りなく整理する意識を持ってください。
一人の人物像としてペルソナシートに落とし込む
共通パターンから代表的なものを選び、一人の人物像として仕上げます。名前、役職、業務内容、抱えている課題、情報収集の方法などを項目ごとに書き出し、一枚のシートにまとめましょう。箇条書きだけで終わらせず、「毎朝Googleで業界ニュースを検索する」のように行動が想像できる書き方を加えると、施策を考える際にペルソナを活用しやすくなります。
手順の全体像をつかんだところで、次はシートに記入する具体的な項目を整理します。
ペルソナに設定すべき項目と記入例
ペルソナシートに何を書くかで手が止まる方は少なくありません。BtoBマーケティングの場合、個人のライフスタイルよりも業務に関連する項目を中心に据えるのがポイントです。
BtoBでは「年齢や趣味」よりも、業務上の立場や課題を詳しく設定することが大切です。項目と記入例を表にまとめました。
基本属性
項目 | 記入例 |
氏名・年齢 | 田中健太(35歳) |
会社・規模 | SaaS企業、従業員60名 |
役職・業務 | マーケティング担当(一人)、企画から効果測定まで |
決裁権限 | 30万円まで |
課題・悩み・情報収集の行動パターン
項目 | 記入例 |
困っていること | Webサイト月5,000PVだが問い合わせにつながらない |
手が回っていない課題 | コンテンツの企画と制作が後回しになっている |
情報収集チャネル | Google検索、業界メディア、ウェビナー |
ツール選定基準 | 費用対効果、サポート体制 |
この表をベースに、自社の顧客に合わせて項目を追加・調整するとアレンジしやすくなります。
ペルソナの作り方でよくある失敗と回避策
手順どおりに進めてもペルソナが機能しないことがあります。原因の多くは作成プロセスのなかに潜んでおり、特に初めて取り組む方が陥りやすい失敗を2つ取り上げます。
理想の顧客像を描いてしまう
「こんな顧客だったら嬉しい」という願望で作ると、実態からかけ離れたペルソナになりがちです。たとえば、実際の顧客の多くがITリテラシーに不安を抱えているのに、「デジタルツールを使いこなす担当者」と設定してしまうケース。こうしたペルソナをもとにコンテンツを作っても、現実の読者には刺さりません。
回避策はシンプルで、インタビューやアンケートの一次情報を根拠にすること。感覚ではなくデータから人物像を組み立てる意識を持つだけで、精度は大きく変わります。
項目を詰め込みすぎて活用されない
「休日の過ごし方」「好きなブランド」など、BtoBの施策には影響しにくい項目まで盛り込むと、シートが分厚くなって誰も見返さなくなります。
BtoBの場合は、業務上の課題、情報収集の行動、意思決定に関わる条件に絞り込むのが得策です。A4一枚で収まるボリュームを目安にしておけば、ミーティングのたびに確認でき、実務に定着しやすくなります。
失敗を避けてペルソナを仕上げたら、次に考えるべきは施策への活用です。
作ったペルソナを施策に活かすコツ
ペルソナは完成がゴールではなく、日々の施策に組み込んではじめて成果につながります。共有フォルダに保存したまま誰も見返さない状態は、いちばん避けたいパターンです。
コンテンツ企画や導線設計への活かし方
記事のテーマを考えるとき、まずペルソナの課題一覧を見返す習慣をつけてみてください。「この人ならどんなキーワードで検索するか」「どの段階で何を知りたいか」を起点にすると、読者に響くテーマが見つかりやすくなります。
Webサイトの導線設計にも同じ考え方が使えます。ペルソナの行動パターンを踏まえて、最初にどのページを見るか、次にどこへ進むかを設計すれば、問い合わせや資料請求までの流れがスムーズになるでしょう。
定期的に見直すタイミングと方法
顧客の課題や市場環境は変わり続けるもの。半年から1年に一度はペルソナの内容を見直し、現実の顧客像とずれていないか確認してください。
やり方はシンプルで、直近の受注データや問い合わせ内容を整理し、ペルソナの各項目と照合するだけで十分です。大幅な書き直しが必要になることはまれで、項目単位の微修正で対応できるケースがほとんどです。
ペルソナの設計から活用、見直しまでの流れが整ったら、あとはコンテンツを作って施策を回していくフェーズです。
まとめ
ペルソナの作り方を振り返ると、押さえるべきポイントは3つに集約できます。
1つ目は、想像ではなくデータから作ること。顧客データやインタビューなどの一次情報を根拠にすれば、実態に即したペルソナが仕上がります。
2つ目は、項目を絞り込むこと。BtoBの場合は業務上の課題、情報収集の行動、意思決定の条件に集中し、A4一枚に収まるシンプルさを保つのが定着のコツです。
3つ目は、作って終わりにしないこと。コンテンツ企画や導線設計にペルソナを組み込み、半年から1年に一度は見直す運用サイクルを回すことで、施策の精度が上がり続けます。
ペルソナは一度の完成度よりも、使いながら磨いていく姿勢が成果への近道です。まずは手元にある顧客情報を整理するところから始めてみてください。

